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名古屋地方裁判所 昭和29年(ヨ)524号 決定

申請人 全日本自動車産業労働組合東海支部豊工業分会

被申請人 山内物産株式会社外一名

主文

申請人分会より被申請人等に対する作業妨害禁止等の本案訴訟の判決ある迄

一、被申請人等は正当の理由なく自ら又は第三者を使嗾して別紙目録記載の建物工場内に立入り申請人分会の作業を妨害してはならない。

二、名古屋地方裁判所執行史は前項の目的を達するため公示等相当な防止方法を講ずることができる。

(保証金五万円)

(裁判官 成田薫)

(別紙省略)

【参考資料】

仮処分申請書

申請人 全日本自動車産業労働組合東海支部豊工業分会

被申請人 山内物産株式会社外一名

申請の趣旨

申請人分会より被申請人等に対する作業妨害禁止等本案訴訟の判決ある迄

一、別紙目録記載の建物機械その他の設備一式に対する申請人分会の占有を解き之を申請人分会の委任する名古屋地方裁判所執行吏の占有保管に移す。

二、右執行吏は申請人分会の申出により申請人分会に対し第一項の建物機械その他の設備一切の使用を許容して自動車部品の加工作業をなさしめること。

三、被申請人等は自己又は第三者を使嗾して別紙目録の建物工場内に立入り、申請人分会の作業を妨害してはならない。

四、被申請人等は別紙目録記載の工場内に於て被申請人分会が賃加工作業中に係る名古屋金属株式会社支給のクローム鋼二五ミリ乃至九〇ミリ、炭素鋼、丸棒、角棒、刄、之を素材とする自動車部品、トツプギヤー、ワツシヤー、スパイダーの仕上品、半製品に対し豊工業株式会社に対する債権の仮差押の執行をしてはならない。

五、右執行吏は第三項第四項の目的を達するに相当な防止方法を講ぜよ。

との仮処分命令を求める。

申請の理由

一、豊工業株式会社は自動車部品トツプギヤー、ワツシヤー、スパイダー等を名古屋金属株式会社等から素材の供給を受けて加工する業務を営むものであり、申請人分会は右会社に雇われている従業員三十二名を以て組織する労働組合である。この組合は右会社が経営放慢のため賃金の遅配、欠配まできたした挙句、経営の自信を失つて遂に昭和二十九年四月三十日工場閉塞、全員解雇の申出あり、之を撤回して従前からの未払賃金を獲得するため同年五月四日結成されたもので同月十一日、全日本自動車産業労働組合東海支部に加入したものである。

二、ところで豊工業株式会社は被申請人山内兼吉又同人が代表取締役たる山内物産株式会社から別紙目録記載の工場機械その他の設備一式を借受けおる関係から被申請人山内兼吉に対して工場長を嘱託していたのであるが、同人は会社の工場再建につきその経営実権を乗り取ろうとして破れたので、本年四月二十九日、工場長を辞するや工場から右会社を退去せしめようと企図し(同年五月上旬)一方従業員に対しては無断工場内に立入り退去を迫つて大声にて怒なり散らしたり暴行を働き他方会社に対しては作業妨害により明渡の目的を達する為、偶々豊工業株式会社に対する被申請人山内物産株式会社の債権を楯にとり訴外名古屋金属株式会社から委託加工中に係るクローム鋼、炭素鋼、二五ミリ乃至九〇ミリ丸棒、角棒並に之を素材とする自動車部品、トツプギヤー、ワツシヤー、スパイダーの半製品、仕上品に対し同年五月十四日同会社の所有なる事を承知しながら違法な仮差押を強行したのである。(右は御庁昭和廿九年(ワ)第一〇七九号第三者異議事件御参照)

これが為、豊工業株式会社は右加工作業を続行出来ず、加工賃を得て未払賃金を早急に支給するとの確約を実行できない状態となり、又被申請人が取引先に対する信用妨害により折角の工場再建も挫折の危機に際会したのである。こゝに於て窮余右会社は一時その経営管理を申請人分会に委託し、名古屋金属株式会社からの加工賃を以て賃金に充当されたき旨の申出に応じ、申請人分会は同年五月十六日、経営者から別紙目録記載の工場機械その他の設備一式の占有移転を受けて、目下生産の管理中である。

三、然し被申請人等は不日再び右工場内に立入り従業員を脅かして立退を迫り又は右の如く第三者たる会社の供給する素材製品等には違法な仮差押をなして申請人分会の作業を妨害する虞が充分なるものがある。

これでは申請人分会としてはその従業員の賃加工作業に一大支障をきたし、惹いては従業員の生活が危胎に瀕する結果を将来し回復すべからざる損害を蒙るので、之が保全の為、後に提起する作業妨害禁止等の本案訴訟に先立ち取敢えず本申請に及ぶ次第である。

昭和二十九年五月二十五日

右申請人訴訟代理人 弁護士 土田光保

名古屋地方裁判所民事部御中

(別紙省略)

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